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- 認知症予防プログラムについて
木村 成志 先生インタビュー

木村成志先生

Dr.プロフィール

大分大学医学部神経内科学講座
准教授 木村 成志 先生

1996年大分医科大学卒業。済生会熊本病院、大分県立病院等を経て、2007年大分大学医学部附属病院内科第三講師、2014年同院神経内科診療 准教授、2015年より現職。
日本神経学会指導医、日本認知症学会指導医、専門医。

認知症の予防と早期診断・治療を重視した地域連携市民への啓発活動と様々な機関との連携で
認知症への「早期」の対応に挑む

大分県臼杵市は、大分県内でも高齢化が進んでいる地域の1つです。認知症高齢者の増加への危機感から、臼杵市医師会が先頭に立ち、2010年に臼杵市、大分大学医学部と連携し、「臼杵市の認知症を考える会」を立ち上げました。
認知症の予防と早期診断・治療に重点を置いていることが特徴で、市民への啓発にも力を入れています。
医療機関などにある患者さんのデータを、専門職間で共有するICTネットワークシステム「うすき石仏ねっと」も活用し、認知症への早期対応や診療連携に取り組んでいます。
今回は、大分大学医学部における連携の窓口を担当されている神経内科学講座 准教授 木村成志先生にお話を伺いました。

認知症患者さんの増加に危機感。
予防と早期診断・治療に取り組む

― 臼杵市では行政、臼杵市医師会、大分大学が連携し、2010年に「臼杵市の認知症を考える会」(以下「考える会」)を設立し、多職種連携や市民への啓発などを実施されています。活動のコンセプトを教えてください。

木村 認知症対策として、介護や徘徊模擬訓練などを主体に取り組む地域が多いなか、臼杵市では当初から予防と早期診断・治療に重点を置いたことが特徴です。
「認知症を予防し、かつ住み慣れた地域で暮らせるまちづくり」を目指し、それが地域づくりにもつながっています。

― 当初から、予防と早期診断・治療に重点を置いていたのはなぜでしょうか。

木村 私は大学病院で早期診断・治療について研究してきましたが、以前は、紹介される患者さんの多くは重い症状を持たれた方でした。
早期診断は、地域の先生方にいかに早く疑いのある人を紹介していただくかにかかっているため、講演を行うなど様々な地域で活動していました。

早期発見には市民への啓発が不可欠。
行政・医師会・大学の協働で様々な取り組みを実施

― 地域での講座も開催していますね。

木村 当時の副市長から、「地域で実施したほうが参加する人も多い」と助言されて始めたのが、小学校区単位での「なるほど認知症講座」です。
私の講演と、タッチパネル式の簡易検査など認知症検診をセットで行い、早期発見・診断も目指しました。
5年かけて市内の全18校区を回ったのですが、市長が18回の講座の最初から最後まで参加してくださり、その熱意に我々も思いを新たにしました。

週1回の外来で専門医が治療導入し、かかりつけ医が診療を引き継ぐ

― 検診で認知症の人が見つかった後は、どのように診療につないでいるのでしょうか。

木村 簡易検査で引っかかった人は二次検診として問診を行い、最終的に治療が必要と判断されるのは1校区に1、2人程度です。
そうした人は、「考える会」とつながりのある地域の先生方に紹介状を書いて診療をお願いしていますが、これまでに断られたことはありません。
「考える会」の設立後、私はコスモス病院で週1回外来を担当していて、新規症例や認知症の周辺症状(BPSD)で対応が難しい症例などの紹介を受けています。
常に外来で紹介を受けられるようにするには、治療導入後は紹介元に戻すことが必要ですが、地域の先生方が受け入れてくださるので余裕を持って対応できています。
最近では軽度認知障害(MCI)の疑いで紹介が来るようになっているので、かなり早期からの対応もしやすくなっています。

継続的な取り組みで、市民や専門職の知識や理解も向上

― お話から、地域全体の認知症への対応力が高まっているという印象を受けます。

木村 認知症への理解も進み、市民の方々には研究にも協力していただいています。
MCIが判明してもまだ予防法が確立されていないため、コスモス病院で実践し効果を検証しながら、自宅や地域でもできる予防プログラムを作成しました。

大分県の認知症予防プログラム

また、県からの委託で大学と臼杵市、IT企業が連携して生活習慣と認知症発症の危険・防御因子を調べる研究も実施しました。市民の手首に生体センサーを装着してもらい、血圧、歩数、睡眠の深さ、会話量などのデータを収集しMMSEのスコアとの関係を分析するもので、最終的に900人近くのデータが得られました。
その結果、認知症の予防には、11日3,276歩以上の歩行、26〜7時間の適度な睡眠、31日80〜321分の会話が大切であることが分かりました(※1)。
次の研究ではこれらの結果からMMSEの機械的予測モデルを立て、各被験者の生活上の危険・防御因子を踏まえた指導を実施し、予防効果を追跡する予定です。

参考文献(※1) Kimura N et al:. Front Neurol, 2019 Apr 24;10:401. online.

― 最後に、今後の展望を伺えますか。

木村 今までの10年間で早期診断・治療、多職種連携と顔の見える関係づくり、まちづくりという土台がおおよそでき、これからが本格的に予防に取り組むステージだと考えています。予防が確立することで、臼杵市の認知症対策は完結すると考えています。

― ありがとうございました。

インタビュー出典:認知症診療の「未来」を灯す情報誌 あかり

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